コラム6 ヒトの繁殖戦略と生活史戦略、そして現代環境
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進化心理学をめざすきっかけになったのは、1990年に参加した二つのクローズドのシンポジウム
シチリア島のエリーチェで開かれた「ヒトと動物における子どもの保護と虐待」についてのシンポジウム
この時の縁が進化心理学、そして日本人間行動進化研究会、のちに学会の設立へとつながる
カリフォルニア大学サンタクルス校で開かれた「メスの生物学と生活史」についての、女性研究者のみのシンポジウム
ヒト含むいろいろな動物のメスの生理学と生活史戦略に関するシンポジウムだが、もう一つの柱は、動物における性差の存在を熟知し、性差が存在する進化的理由も理解しているわれわれ女性研究者は、フェミニズムとどう向き合っていくのか、と言う問題 以後、この問題に関して色々と考え、社会的にも発言するようにしている
夫の長谷川寿一は心理学者であり、私たちは心理学と自然人類学という二つの異なる分野で育ちながら、野生霊長類の行動生態の研究を一緒に行ってきた しかし、私自身は、進化生物学と行動生態学の理論を知り、いろいろな動物を研究してきても、ヒトという対象はあまりに複雑で、どのように取り組めば、浅薄ではない進化心理学へと進めるのか、長らくわからないでいた この研究内容から、人類進化史とその進化環境でヒトが出会った諸問題、ヒトの脳の働きと領域固有性、文化と言語の役割などの問題が有機的につながり、私の頭の中で整合性を持ってつながるようになった それには、文化と言語の役割に関わる新たな視点も必要だと考えている
また、ヒトの進化史を知る研究者として、現代環境がいかに新奇であり、それが現代人にどんなストレスをもたらしているのかについて発言することは、進化心理学者としての義務の一つではないかと考えている
ヒトに限らず進化的な考察をしようとすれば、かなり学際的に多様な知識が必要